だんだん御馴染みになってきました、ねこ先生の連載『インターネットと歴史』の第5回目です。

ブログにユコわかシリーズをupする毎に、感想や皆の反応をねこ先生と話したりします。おかげで(笑)パソコン通信のお話が予定より多くなっちゃいましたが、個人的にはねこ先生の過去話まで出てきて面白かったです。
で、いよいよ今回からインターネットの話! と思いきや、その前のお話です。 

ねこ先生は細切れに原稿を書いているのですが、頭の中では全体の構造は出来上がってるとのこと。どうやら、まだ序盤のようです(笑)

今回は(も)ちょっとリンあれには似合わない真面目なエントリになってます。(ねこ先生は相変わらずリンあれは見ないそうですw ということで、ねこ先生は、自分の想像のリンあれに投稿しているというw)

それでは、お読みください。(。╹ω╹。)

《ユコびんでもわかるインターネットと通信の歴史》電話とインターネット

(1)インターネット以前の通信事情をごく簡単に

ねこ先生プロフ

〜序文
1)携帯電話が普及するまでの電話事情
2)携帯電話の普及
3)パソコン通信 
4)パソコン通信とインターネットの文化の違い
5)パソコン通信についてもう少し

ユコびんでも分かるインターネットと通信の歴史、これまでのエントリを読んでいない方は、こちらからどうぞ。
《ユコびんでもわかるインターネットと通信の歴史①》電話とインターネット
《ユコびんでもわかるインターネットと通信の歴史②》電話とインターネット / パソコン通信 〜ねこ先生連載
《ユコびんでもわかるインターネットと通信の歴史③》パソコン通信とインターネットの文化の違い
《ユコびんでもわかるインターネットと通信の歴史④》パソコン通信についてもう少し

6)日本でのインターネットの黎明期におけるNTTと「通信自由化」という「嘘」

 日本でインターネットが始まったのは、奇しくも電話が自由化されたのと同時期(1985年頃)です。最初はいくつかの大学(慶応大学や東京工業大学など)の間での情報のやりとりのために実験的に行われたものですが(JUNET)、広がりは早く、すぐに数百の大学や企業がこのネットワークに接続するようになりました。やりとりは、UNIX同士を結ぶためのプログラムを用いて行われ、一般には知られていない存在としてスタートしたのです。しかし、研究者たちの動きは早く、88年には、IP接続によるインターネット接続が始まりました。

 実は、このインターネット接続には、NTTも深く関わっています。独占的な通信業者であったNTTが絡むことは、ある意味で当然なのですが、この年にNTTが全国の主要都市を結ぶ光ファイバー網を完成させたことが、インターネットの普及の基盤となったのです。

 ここで思い出していただきたいのは、85年の通信事業の自由化と同時にNTTが電話債券の値下げ・維持を行ったことです。第1回目に書いたように、本来は電話回線の敷設や交換機の拡充のため(要するに電話回線をつなげるため)に集められていた莫大な資金(結果的に総額4兆円ほどになったかと思います)を、電話回線をつなげるための必要が薄れたのに集め続けた理由がここにあります。NTT(郵政省/総務省)は、かなり早い時期から通信網を光ファイバー化することを考えて(決めて)いて、その通信網の整備のために莫大な資金が必要になったからです。そのことを「隠して」実質的に電話債券の維持を図ったのは、85年当時には、光ファイバー網の重要性が理解されていないので「そんなものいらないから、負担分だけにしろ」という声が上がることを危惧したこと、通信自由化と言っておきながら実質的にNTTだけに特例を与えて資金集めを認めていることに触れたくなかったこと、そしてなにより、光ファイバー網を広げる速度を維持したかったことが理由です。FTTHが現実的に見えてきて、これから起こるであろう、他の通信事業体との競争を有利に進めるためには、先手を打った光ファイバー網の充実は不可欠でした。

 NTTは、長い時間をかけてFTTH(Fiber To The Home/エンドユーザーまで光回線で接続すること)網を整備し続けています。NTTの事業計画(収支報告)を見ると、2000年頃には、東西両地域会社で、光ファイバー網の整備のために毎年1000億ほどの投資を行っていたことがわかります。この原資を作り出すためには、それまでに集めた加入権料を返すことなどできるわけがなく、「将来は資産価値をゼロにする」ことを決めていながら、72000円をとり続けていたのです。

 一方、日本の「通信自由化」とは、全くの虚飾に満ちたアドバルーンでしかありませんでした。国鉄の分割民営化と同じように、税金やそれに近いもの(電話債券など)で広く集めた資金を持った会社を民間に「払い下げ」(株式会社化して株式を売る)、官僚の天下り先を確保し、官僚主権主義の権益を守り、同時に労働運動(通信の場合は全逓、国鉄の場合は国労)を無力化することが目的でした。この筋書きは中曽根内閣の頃に書かれたものですが、もう少し以前から官僚の頭の中にはあったのかもしれません。「自由化」という名前で寡占状態を作り、「競争」をしている振りをさせてコントロールするというやり方は、官僚主権主義の日本では、戦前から官僚が得意とした手法でした。(注)

(注)民営化の成功例としてもてはやされている国鉄の分割民営化ですが、実態はとても成功といえるものではありません。本州のJR各社は確かに黒字ですが、その裏には30兆円以上の赤字を国債やタバコ税として「付け替え」をした事実があるのです。国鉄がJRになるときに、借金は多くは国が背負い、労組員を中心に大規模な人員整理をし、地方の生活路線を切り捨てた、という経緯があります。これで黒字にならないはずはなく、会社を分割したことによる天下りポストの膨張、利益優先の安全軽視(例えば、神戸での痛ましい事故を覚えているでしょう)がまかり通るようになったのです。確かに、駅員の愛想はよくなりましたし、各種の割引サービスなども充実しました。しかし、そのことを目くらましに、真の目的は隠されているのです。日本人は政府の発表を盲目的に信じすぎる。原発のことでも、「東京電力が今年度に黒字化」などという「絵空事」がマスコミの報道に溢れていますが、その裏でどれだけの税金が投入され続けるのか。少し、目をよく見開いた方がいいと思うことが多いのが残念です。

 通信の自由化とは、すなわち電電公社と道路系、鉄道系の3大勢力をつくり、政官でそれをコントロールすることを目的としたものでした。通信事業を独立して行うことはとても困難です。主要な地域(通信のトラフィックが多い大都市間など)を結ぶ大容量の通信網を整備するだけでも大変ですし、ましてや企業や一般家庭まで回線を敷設することはとても難しいのです。自由化、といったところで、おいそれと新しい企業が参入できるはずはありません。無線になれば、バンドの割り振り、という「官僚の思いのまま」の必殺アイテムもあります。ところが、これをクリアできる可能性がある企業がありました。高速道路に沿って通信網が整っていた道路系と、鉄道通信を持っていた旧国鉄系です。NTTが電話債券で資金を集めたのと同じように、高速道路や旧国鉄は、税金(や通行料金など)を投入してインフラをある程度整えた、という条件に当てはまったのです。すなわち、「自由化」ではなく、「寡占化」を目指したものだといってよいでしょう。そして、その3者を支配できるのが、郵政省、建設省、運輸省という3大利権官庁だった、ということも覚えておいてほしい。これが郵政省の管轄だけだったら、自由化などしなかったでしょう。3省の利益になることだからこそ、「自由化」というお題目でNTTは民営化されたのです。そのことは、この3者に対抗するように登場したベンチャーが叩き潰されてきたことでもわかります。典型例が、日本にDSLを普及させようとして潰された東京メタリック通信に対するNTTの「いじめ」です。このことについては、後述します。

 当初から予定されていた「勝ち組」ですが、予想外のことが起こりました。鉄道系の日本テレコムの経営悪化です。さらに、経営立て直しのために出資したAT&T、ブリテッュテレコム、ボーダフォンの3社の株式がボーダフォンに集中するという予定外の事態(経営悪化によりBT、さらにAT&Tがボーダフォンに株を売り払った)が起こり、日本側の思惑が外れてしまいました。(外資を導入したのが省庁再編によって運輸省と建設省が国土交通省としてひとつになった直後、というのも、なにやら暗示的です。運輸省が独立していたら、何が何でも日本テレコムを温存したかもしれません)。結果として、官僚が立案したストーリーから外れた旧日本テレコムは、ボーダフォン、そして、ソフトバンクに買収されることになります。だからこそ、ソフトバンクはフリーハンドで動けるのです。このあたりの話も面白いのですが、あまり通信そのものから外れるのもどうかと思いますので、今回は詳しくは触れません。

「結果的に通信料金が安くなったからいいじゃないか」という見方があることは知っています。しかし、通信機器やネットワークの向上によって、このようないびつな「自由化」がなくても、いずれ外圧により、自由化、料金の引き下げは行われたでしょう。もうひとつ覚えておいてほしいのは、通信料金が安くなった代わりに切り捨てられたものがたくさんある、ということです。インターネットで電話番号を検索できない人にとっては、104の番号案内は大切なものでした。番号案内の料金は10倍(見方によっては20倍以上、とも考えられます)になりました。携帯電話を持っていない人にとっては生命線だった公衆電話は次々に撤去されています。普通に生活を送るためには「携帯電話を持たない自由」「インターネットを使わない自由」が、もはやなくなってしまったと言っても言い過ぎではないかもしれません。

***

 少し、話が硬くなりました。次回は、ちょっと柔らかめの話を。

前回のねこ先生の寄稿エントリ
docomoのiPhoneとアップルの「進化」 (寄稿:ねこ先生)【リンあれ三周年企画】 

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